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【パナソニック汐留美術館でも現在開催中】 フランク・ロイド・ライト展 〜 博物館明治村へ


概要

豊田市美術館にて開催されたフランク・ロイド・ライト展と博物館明治村に行ってきたのでそのレポートである。正直あまり前提知識はなく、建築系の展示会に行ったこともなかったが、非常に有意義であった。建築に興味がある方は是非行かれると良いと思う。

フランク・ロイド・ライトという人

ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと共に近代建築の三大巨匠と称されるアメリカ合衆国の建築家である。有機的建築(オーガニックアーキテクチャ)を提唱し、建築物が自然環境と調和し、その中に溶け込むようなデザインを目指した。建築のみならず、家具やインテリアなどの設計も手掛けており、機能性と美しさを兼ね備え、時代を超えて世界中で高く評価される。

フランク・ロイド・ライト展とは?

豊田市美術館にて2023年10月21日〜2023年12月24日まで「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ世界」が開催された。

展示入り口の様子

フランク・ロイド・ライトの建築思想、設計した建築における数々の図面、模型、また椅子・机などのインテリアなどが展示されていた。旧帝国ホテル、プレーリー様式の数々の邸宅、タリアセン、アンビルト高層建築の「マイル=ハイ・タワー」、都市構想であるブロードエーカー・シティーなど様々。
印象的であったのは浮世絵の展示が多くされていたことであった。フランク・ロイド・ライトは浮世絵愛好家・コレクターであり、葛飾北斎や歌川広重などから影響を受けた。最も代表的かつ有名な作品であり、世界遺産にも登録されているカウフマン邸(落水荘)は葛飾北斎の作品からインスパイアされたともいわれる。落水荘の自然との調和・豊かさは、彼の建築思想である有機的建築を非常に良く体現しており、自然と調和する世界観・宗教観を持つ日本的文化との親和性を感じる。近代建築の巨匠と呼ばれる一人の建築思想に日本文化が色濃く影響を与えているというのは興味深い。
総じて、有機的建築の世界観がよくわかる有意義な展示であった。

展示の様子(1)
展示の様子(2)
展示の様子(3)
展示の様子(4)

博物館明治村とは?

上記展示会でも紹介されていた旧帝国ホテルの中央玄関が移築され現存している。愛知県犬山市にある「博物館 明治村」内に存在している。明治村は、著名な建築家であり豊田市美術館も設計した谷口吉郎氏と元名古屋鉄道株式会社社長の土川元夫氏によって創設された。価値ある明治建築を残し伝えることを目的とし、現在約60の建築物が存在している。

明治村 正門

名古屋からの方角は異なるが、明治村は豊田市美術館と同じ愛知県にあるし、せっかくなので訪問してみた。


名古屋駅から電車とバスでおおよそ1時間半弱かかる。山の中のためアクセスは良くない。わざわざ山奥まで来る人はあまりいなく閑散としているのではと予想していたが、社会科見学に来たであろう子供の集団から、カップル、ご年配まで様々な方が(平日にも関わらず)多く来訪していた。

帝国ホテル正面玄関に至る道中にも様々な建築物がある。また、明治時代のものを再現した蒸気機関車やバスが定期的に走っている。明治村は撮影地として有名であり、様々な映画・ドラマで利用されているらしい。蒸気機関車などは、NHKで放映された「坂の上の雲」のロケ地としても使われた(参考)。


約60の建築を全てじっくりみるのは1日ではかなり大変であるが、明治時代の雰囲気を感じながらの散策や休憩は、建築や歴史に興味のある方にとって魅力的な体験となるはずである。

金沢監獄正門
金沢監獄中央看守所・監房内部
聖ザビエル天主堂外観
聖ザビエル天主堂内部
第四高等学校 物理化学教室
三重県尋常師範学校・小学校
歩兵第六聯隊兵舎内部
日本赤十字社中央病院病棟

敷地内は想定外に広く、正門から真反対の位置にある帝国ホテル正面玄関まで約1kmほど歩いた。若干疲弊しながらたどり着くと、フランク・ロイド・ライト展で観たシンメトリーの正面玄関が厳然と存在していた。外から見るだけでなく、実際に中に入ることができ、当時の雰囲気を感じることができる。レンガと大谷石を多く使用して構成され、細かい装飾や椅子などのインテリアもフランク・ロイド・ライト自身が関わっており、有機的建築といわれる調和や連続性を重視した空間デザインを体験できる。そしてなぜかポーツマス条約で利用されたという机もある。

また、2階に上がるとカフェがあり、高貴な空間を楽しみながらゆっくり疲れを癒やすことができる。カフェの椅子は、ライトの設計した椅子の復元だそうで、六角形の特徴的なデザインとなっている。

帝国ホテル中央玄関

帝国ホテル中央玄関内部様子(1)
帝国ホテル中央玄関内部様子(2)
帝国ホテル中央玄関内部様子(3)
帝国ホテル中央玄関内部様子(4)

東京汐留美術館にて開催中

豊田市美術館の展示は終了しているが、2024年1月11日〜3月10日までパナソニック汐留美術館にて展覧会が開催される。

ご興味ある方は是非。

https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/24/240111/